NISAの損とFXの利益は相殺できる?損益通算できる組み合わせ・できない組み合わせ
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NISAの口座で出た損を、FXで出た利益と相殺することはできません。NISAの中の損は税金の計算では「ないもの」とみなされ、FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」という別の箱で計算されるからです。FXの利益とぶつけられるのは、同じ箱に入る取引所の株価指数先物や商品先物、第一種金融商品取引業者・登録金融機関を相手にした店頭デリバティブ(暗号資産に係るものなどを除く)といった取引の損だけです。どの組み合わせなら相殺できて、どれができないのか。国税庁の資料(令和8年4月1日現在の法令)で確かめた内容を表にしました。

この時期になると、NISAの評価額がマイナスのまま年末を迎えそうで、FXのほうは少し利益が出ている、という人の相談をよく見かけます。損と利益を合わせれば税金が減るのでは、と考えるのは自然です。私もNISAは自動積立のまま放っておく派で、分配金の受取方式を最初に見落としたことがあります。制度の細かいところで損をしないように、一度きちんと並べておくことにしました。
国税庁のタックスアンサー No.1521 によると、FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」として、ほかの所得と分けて計算します。税率は所得税15%と住民税5%。これに2013年分から復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わるので、合計で20.315%です。
2027年分からは中身の内訳が変わります。復興特別所得税が1.1%に下がり、新しく防衛特別所得税が1%かかります。足すと2.1%で同じなので、FXの利益にかかる税率は20.315%のまま変わりません。
この扱いになるのは、取引所で行うFXか、金融庁に登録した国内の業者(第一種金融商品取引業者・登録金融機関)を相手にしたFXです。それ以外の業者との取引の利益は、No.1521の後半で、一般的には総合課税の雑所得になると説明されています。こちらは税率が所得に応じて変わり、同じ箱の損とも足し引きできません。
ポイントは、この箱の中でしか損益を足し引きできないことです。No.1521 には、他の「先物取引に係る雑所得等」とは損益通算できるが、それ以外の所得とはできない、とはっきり書かれています。
NISAの中で出た損は、税金の計算の上では最初から存在しない扱いだからです。国税庁のNISAのQ&Aでは、非課税口座で取得した株や投資信託を売って出た損失は「ないものとみなされます」と説明しています。そのうえで、特定口座や一般口座の利益との損益通算も、翌年以降への繰越控除もできない、と続きます。
2024年に始まった今のNISAも、この扱いは同じです。令和8年4月1日現在の国税庁No.1474の注3にも、NISA口座内の株を売って出た損は損益通算も繰越控除もできない、と書かれています。つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円、生涯で1,800万円まで非課税で持てる代わりに、損が出ても税金の計算には使えません。利益に税金がかからないことと、損が計算から消えることは、セットになっています。

よく聞かれる組み合わせを、国税庁の資料に沿って並べました。
| FXの利益と… | 相殺 | 理由 |
|---|---|---|
| NISA口座で出た株・投信の損 | できない | NISAの損は「ないもの」とみなされる |
| 特定口座で出た株・投信の損 | できない | 上場株式等の譲渡所得は別の箱(No.1474) |
| 別のFX口座(国内の登録業者)で出た損 | できる | 同じ先物取引に係る雑所得等 |
| 取引所の株価指数先物・商品先物、第一種金融商品取引業者・登録金融機関を相手にした店頭デリバティブ(暗号資産に係るものなどを除く)の損 | できる | No.1522が同じ箱に入る取引として挙げている区分 |
| 給与所得や事業所得 | できない | 先物取引に係る雑所得等以外の所得 |
意外と見落とされやすいのが2行目です。NISAではない特定口座で株の損が出ていても、FXの利益とは足し引きできません。株の譲渡損が合わせられる相手は、上場株式等の配当や利子までです(配当所得は申告分離課税を選んだもの・No.1474)。FX口座を2つ持っていて、片方が利益、片方が損なら、確定申告で合算できます。
同じ箱の中で引ききれなかった損は、翌年から3年間繰り越して、その後のFXの利益から差し引けます。ただし自動ではありません。国税庁のNo.1523では、条件が3つ決められています。
会社員で給与以外の所得がないと、確定申告は「しなくていいもの」と思いがちです。でもFXの損を繰り越すつもりなら、損が出た年に申告しておかないと、その損は使えなくなります。途中の年に1回でも申告を抜かすと、それまでの繰越が切れます。

やめておく、が私の答えです。表のとおり、株価指数先物や店頭デリバティブ(暗号資産に係るものなどを除く)の損ならFXの利益と相殺できます。でも、損を出すための取引を新しく始めるのは順番が逆です。相殺できるのは実際に出た損だけで、20.315%の税金を減らすために、それより大きい額を失うリスクを取ることになります。
数字で考えると分かりやすいです。FXで10万円の利益が出た年の税金は、20.315%で2万315円。これを消すために同じ箱に入る別の取引で10万円の損を出せば、税金は0円になります。でも手元のお金は、税金を払った場合より7万9,685円少なくなります。

NISAの評価損も同じです。相殺に使えないなら、NISAの中の銘柄は税金の都合ではなく、持ち続けたい理由があるかどうかだけで判断します。私はNISAは長く持つ口座、FXは少額で試す口座と分けていて、2つの損益を合わせて考えないことにしています。税金の扱いがここまで別々だと分かってから、そのほうが迷わなくなりました。